2024年6月に『カントの倫理学ー正しく考えるために』出版を計画しています。

本記事では、カント倫理学を学ぶ際、押さえておくべき3つの概念(用語)を説明したいと思います。
1.意志
カントにおいて意志(will, ドイツ語でWille=ヴィレ)は、普段私達が哲学的な議論で行為(action)と呼んでいるものに等しいと考えてよい。
確かに、「なぜこの手があがるのか」という自由意志の問題を扱うことはできる。しかし、倫理学に取り組む限り、そういった問題は取り上げないでよい(注1)。
ようするに意志決定(decision)の文脈で、意志を論じるべきだと言いたいのだ。「~する」「~した」という行為の問題は、倫理学においては「~しようと思う」という意志決定の問題に重なる。
カントにおける行為(ドイツ語でHandlung=ハンドルング)への考察、いわゆる行為論の不在も、以上の論点にかかわっている。
2.格率
カントの教訓は、いかなる問題も自分の視点で考えよ、というところにある。格率(maxim)という彼固有の概念(概念)も、その文脈で捉えられると思う。
例えば、未婚女性はダメだ、と男性が言うのはどうだろうか。そうではなくて、彼が女性になった視点で、その発言を捉え返さなくてはならない。
もし「私」が女性ならば、必ず結婚するつもりだ。
これが格率の例である。問題を外から眺めるのではなく、もう一方踏み込んで、当事者と同じ状況に自分が置かれたと考え、行為を選択する(意志決定する)。これが、格率の基本的な発想になる。
3.道徳法則
カント倫理学の代名詞ともいえる道徳法則(moral law)については、次の定式で覚えればよい。
その格率を通じてなら同時に普遍的法則になってほしいと思える、そういう格率に従ってのみ行為せよ。『人倫の形而上学の基礎づけ』IV421(注2)
格率の項目(上記2)で、倫理的問題を、当事者の状況に身を置いて考えるのが格率の手法だと伝えた。
例えば、もし「私」が女性ならば、必ず結婚するつもりだ。
「私」が男だとして、確かにこの格率を採用したいと思う。しかし、それは「私」ひとりの話であり、独善的ではないか。
本当に、その行動選択が倫理的に正しいといえるのなら、それが(その行動選択を表した格率が)万人に採用されなければならない。
道徳法則は、この善(倫理的な正しさ)の基準を言っているのだと、そう理解できる。
注
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注1
『リンリのロンリ』=『リンリの教科書』 section 97に「心身問題」との絡みで、この点を詳述しています。機会があったら本サイト内でも取り上げます。
注2
IV421とは「アカデミー版カント全集4巻421ページ」という意味です。


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